こんにちは。HIELCCの相談員をしています特定社会保険労務士の石田達則です。
マイナンバーカードの申請が7割を超えたそうです。健康保険証としての活用が決まったこともありますが、やはり申請件数が伸びたのは2万円分のマイナポイントが大きかったのではないでしょうか?
マイナポイントはキャッシュレス決済サービスのポイントや割引として付与されますが、私の身内でも今まで使っていなかった電子マネーを利用するきっかけとなっています。2021年のキャッシュレス決済比率は32.5%となり、今後ますます増えていくことが予想されています。
この波は賃金支払いの場面にも到来しており、2023年4月1日から賃金のデジタル払いが可能になります。 賃金は通貨で支払うことを原則としています。
しかし、例外として労働者が同意した場合には銀行口座、證券総合口座への支払いが認められており、多くの会社では口座振り込みを実施していると思います。
今回の改正では、新たな選択肢として労働者の同意を得て「資金移動業者の口座」への資金移動による賃金支払(以下「賃金のデジタル払い」という)が可能となりました。 資金移動業者とは、送金サービスができる登録事業者のことを指します。「○○ペイ」などの名称でサービスを実施している事業者のことですが、この度の賃金のデジタル払いができる事業所となるには厚生労働省の定める要件(資金の保全等)をクリアし指定を受ける必要があります。
この申請と審査が2023年4月から開始されますので、審査に通過した資金移動業者が誕生し、賃金のデジタル払いが実際に可能になるのはもう少し先になります。
賃金のデジタル払いは、あくまでも選択肢の一つにすぎませんので、会社が必ず実施する必要はありませんし、労働者に強制することもできません。事業所として実施するのであれば次の事項について検討・整備が必要です。
① 就業規則の改定 賃金のデジタル払いに関しては「賃金に関する事項」に該当しますので、社員が希望する場合にはデジタル払いとする旨等、就業規則へ記載することが必要になります。
② 労使協定の締結 賃金のデジタル払いを行う場合は、「令和4年11月28日基発1128第4号」に発出された通達で、過半数組合または労働者代表と賃金のデジタル払いに関する労使協定を締結することが必要とされました。
③ 労働者の同意と口座情報の取得 書面または電磁的記録による労働者の同意が必要です。また、労働者の指定する指定資金移動業者の口座へ支払う必要がありますので、口座情報の取得も合わせて行います。
④ 業者の選定 会社が選定できるのは厚生労働省の指定を受けた指定資金移動業者のみになります。会社として対応可能な指定資金移動業者の範囲等を決定し、労使協定に記載することが必要です。
賃金のデジタル払いは、振込み手数料の削減や労働者の利便性を上げることが期待される反面、支払方法(選択肢)の増加により給与担当者の手間が増加する等の懸念もあります。 導入をする場合は自社の場合のメリット・デメリットをよく検討して進めていきましょう。
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