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配偶者手当の見直しの留意点

こんにちは。HIELCCの相談員をしています特定社会保険労務士の石田達則です。

厚生労働省は昨年、収入が増加して一定の収入(社会保険の扶養の場合であれば通常130万円)以上となった場合に、配偶者の扶養から外れて社会保険料の負担が発生し、その分手取り収入が減少するため、これを回避する目的で就業調整するパート・アルバイトの方への対応として、「年収の壁・支援パッケージ」を打ち出し、収入が一時的に上がったとしても、事業主がその旨を証明することで、引き続き扶養に入り続けることが可能となる支援措置を実施しています。

この年収の壁対策の一環として、「配偶者手当」の見直しについても触れています。

これは、社会保障制度のみならず、企業の配偶者手当制度も一定の収入要件や扶養に入っていることを支給基準とすることが多く、結果として「年収の壁」として、就業調整の一因となる場合があるということを踏まえた提案です。

主旨としては、昨今の人手不足の解消や本人の希望に応じて可能な限り労働参加しやすい環境作りが大切であるということがあり、基本的には配偶者手当を就労阻害要因とならない他の基本給、手当、その他の処遇へ見直すことが主眼となっています。

配偶者手当は、一般的には家族手当や扶養手当等の名称で支給されていることが多い手当です。職務に関連する手当ではなく、福利厚生的な要素の強い手当で、支給目的としては扶養家族に応じて会社で生活支援することで、社員の生活の安定と安心して働ける環境とすること。結果としての社員定着があります。配偶者のみならず、子、両親、祖父母、さらに兄弟姉妹まで支給しているケースもあり普及している手当です。

一方で、職務関連ではないため扶養家族のいる方といない方で職務に関係のない事由で格差が生じるという面もあります。また、賞与額計算の基礎に含めている場合もあるなど、目に見えにくい格差となっているケースもあります。

配偶者手当の見直しについて、厚生労働省では次のような留意点を示しています。

①ニーズの把握など従業員の納得性を高める取組

②労使の丁寧な話合い・合意

③賃金原資総額の維持

④必要な経過措置

⑤決定後の新制度についての丁寧な説明

賃金は労働条件ですので、変更を行う場合には、労働契約法の規定等の関係法令や判例も踏まえた対応が必要となります。特に生活に直結する労働条件を変更する場合は丁寧な対応が必要であり労働契約法では次のような定めがあります。

●使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。(労働契約法第9条)

●使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。(労働契約法第10条)

実際に見直しをする場合は、不利益だけの労働条件変更とならないように、配偶者手当の廃止、縮小をする代替措置として、子供に対する手当を増額する対応が一番多いです。その他能力開発等に資する手当として資格手当等の創設拡充。介護等今後発生が見込まれる事由に対しての手当創設などもあります。廃止縮小に対して一定期間の経過措置を設ける場合もあります。

見直しを実施する場合は、厚生労働省の留意点などを参照して自社の必要性と時代に合ったより納得性のある制度構築となるように検討していきましょう。

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